【ZINE】家で楽しむアーティスト・イン・レジデンスー坂本豊@佐賀県多久市 reco:plays
2020年2月から3月にかけて坂本豊さんを迎え佐賀県多久市にあるreco:playsで行われたアーティスト・イン・レジデンスの模様を収めたZINEです。
多久市に提出された資料用冊子をArtas Galleryのアートディレクター峰松がリライトした解説も載っています。
現在(2020年7月10日現在)、新型コロナウイルス感染拡大の為、レジデンス期間中に坂本豊さんが制作された作品の発表日は未定になっておりますが、2020年7月9日にBandcamp限定でリリースされています。
Bandcamp
https://yutakasakamoto.bandcamp.com/track/synthetic-virtual-nature-soundscape-002?fbclid=IwAR3krzzDObjN1iwA4NkXHk56avjyKe1TAteHh40hQ-nOVQ0_ay916aLZ33s
以下、坂本豊さんの作品リリース時のコメントです。
”Synthetic Virtual Nature Soundscape 002”
多久市アーティストインレジデンス制作発表の
機会をコロナで失った成果物。
Bandcamp限定でリリースします。
買わなくてもフルレングスで聴けますよ。
”時間”とは人間が作り出した”時”を測る物差しのこと。
”時”は見えずとも目の前に常に存在する。
海や山に行って ”癒される” という感覚は ”時間” という概念から脳が解放され、 二度と繰り返す事の無い、不規則なシーケンスの音を耳で追う事をやめて、 ただ ”音が入ってくる状態” の事だと思う。聞き慣れた自然の音の周波数、音の鳴りかたを真似し、 ”シンセサイザー”を使って忠実に再現。新感覚の写実的ノイズ作品です。
極力小さな音で鳴らして下さい。
【佐賀県多久市アーティスト・イン・レジデンス】
多久市アーティスト・イン・レジデンス(芸術家滞在制作)は多久市を九州北部を中心とした文化芸術の交流拠点として、アーティストが集まり多久市民により文化芸術に関わってもらえる為に始まった多久市が主催する事業です。
冨永ボンド氏の発案から、一般社団法人たく21と、東京を始めとする国内、ドイツを中心としたヨーロッパ、台湾などにネットワークを持つ株式会社FUNIDEAが運営するギャラリー、「Artas Gallery」(アルタスギャラリー)が事業を委託される運びになりました。
多久市は佐賀県の中央部に位置する盆地にあり、山々に囲まれる美しい場所にあります。
史跡の町と呼ばれ、1708年(宝永5年)に竣工された孔子を祀る国の重要文化財「多久聖廟」があり、今もなお孔子の教えが残る、孔子の里と呼ばれています。
2020年、多久市アーティスト・イン・レジデンスではドイツ・ベルリンでハードウェア・テクノ・ユニット「Sub Human Bros(サブ・ヒューマン・ブロス)」として活動されている坂本豊さんをお招きして行われました。
坂本豊さんは多久市に2020年2月17日(月曜日)から3月2日(月曜日)、うるう年だった為2月29日も含む15日間滞在され、多久市商店街にあるreco:plays(レコプレイス)にて2月18日から3月1日まで公開制作をされました。
ミュージシャンをお招きして、コンセプチュアル・メディア・アートを主体として制作、発表を行うアートアーティスト・イン・レジデンスはまだ世界的にみて珍しい試みですが、徐々にアメリカやヨーロッパでも広がりをみせつつあります。
この多久市のアーティスト・イン・レジデンスは佐賀県、ひいては日本の中でも先進的であり、日本の飽和しつつあるアーティスト・イン・レジデンスのあり方を、またアーティスト・イン・レジデンスを通して行われる町おこしに新たな風を吹き込む事が出来ました。
残念ながら新型ウィルスの世界的な流行の為、厚生労働省の指針により当初予定されていた成果物発表は延期され、成果物発表の公開日は未定になっております。(2020年7月10日現在)
Artas Gallery
アートディレクター
峰松宏徳
【SVNS(シンセティック・ヴァーチャ・ネイチャー・サウンド) 】
”時間”とは⼈間が作り出した”時”を測る物差しのこと。
”時”は⾒えずとも⽬の前に常に存在する。
海や⼭に⾏って ”癒される” という感覚は ”時間” という概念から脳が解放され、
⼆度と繰り返す事の無い、不規則なシーケンスの⾳を⽿で追う事をやめて、
ただ ”⾳が⼊ってくる状態” の事だと思う。
そこで、聞き慣れた⾃然の⾳の周波数、⾳の鳴りかたを真似し、 ”シンセサイザ ー”を使って再現。
アンビエント的写実ノイズ作品であり、⼀⾵変わったミニマルなランドスケープミュージックでもある。
BGMのバックグラウンドでも機能するデザインされた、⽣活に溶け込む⾳。
坂本豊
【作品解説】
⼈間の作った時を刻む⾳(ビートやリズム、モーター)などの機械的な⾳には[時間]という[⾳]が発⽣しています。
坂本豊がライフワークの1つとして制作しているSVNS(シンセティック・ヴァーチャ・ネイチャー・サウンド)は時間を感じさせる[⾳]を省く事で、[時間]ではなく、⽬の前で流れる[そのままの時]を感じる[⾳]をシンセサイザーで0から⼈⼯的に再現した作品です。
私達が日常生活のどこかで1度は耳にした事のある周波数である[音]を作り出す事によって、録音された自然の音ではありえない、懐かしく感じ、体に馴染む[ノイズ]として、坂本豊が制作するSVNSは違和感なく1日聴き続けられる事ができます。
多久市にあるSCOLCAFEでは坂本豊がレジデンス滞在中に毎日訪れ、試験的にAnker社のSoundCore mini4台を使用し各スピーカーから流れる周波数である[音]を各スピーカー毎に制作し、SCOLCAFE内に立体的に配置する事により、より体に馴染む自然[音]が流れる空間を作り出していました。
秋の⾍の声や冬の森の朝など、季節ごとの象徴である[⾳]の制作をライフワークの1つとして制作しており、私たちが普段耳にする音を通して、音からみる[音]のなる土地の可能性と、そこで生活する人間の生活を文化人類学的な視点からも訴えかけて来ます。
多久市アーティスト・イン・レジデンスで制作された坂本豊の[SVNS]はメディア・アートの1つの分岐点として存在する事になるでしょう。