主旨―ご挨拶に代えて
春寒の候、みなさまいかがお過ごしですか。
このたび、画廊香月/ギャラリーモリタ は、創設25周年を迎えました。
そこで、画廊創設25周年を記念して、戦後日本の美術会を代表するアヴァンギャルド芸術の泰斗・池田龍雄氏の特別企画展を第一弾として開催いたします。
池田龍雄氏は、ご承知のとおり、故岡本太郎氏と並び称せられる戦後美術界の首魁ともいうべき画家であり、少年神風特攻隊の生き残りとして、今もなお「ヒロシマ」「フクシマ」のあいだに広がる破局の現代史を見つめ、活動する前衛芸術家です。
福岡では2011年1月 池田龍雄 回顧展「アヴァンギャルドの軌跡」(福岡県立美術館)、2014年4月 「告発する美術1池田龍雄」(福岡県立美術館)と続いての開催となります。また、2014年に西日本新聞で84回にわたり連載された(4月15日?7月26日)聞き書きシリーズ「画家 池田龍雄さん /わたしの百物語」は同時代を生き抜いた多くのファンが魅了されました。
初日は,池田龍雄氏を迎えてのオープニングレセプション、翌日はギャラリートークを予定しています。
今春より始まる二つの画廊の創設25周年記念特別企画展にぜひご来廊くださいますようお願い申し上げます。
我が心のメルヴェーユ ― 北の眼・南の眼 ―
絵とは何か。
なぜ絵を描くのか。
わたしは遂に解のないこの問題を、ずっと胸の奥に抱え込んだまま今もなお執拗に絵を描き続けている。
まるで、絵を描き続けることそのことがその答えであるかのように。
今や絵を描くこと、表現することは、わたしにとって殆ど「業」のようなものであろうか。
しかしそれは決して辛い「苦行」ではない。
楽しく面白い「苦労」である。
面白い苦労の果てに生み出されてきた作品を、わたしは恐る恐る―内心では自信たっぷり―他者の眼に晒す。
そこでようやく表現は完結し、そのとき作品は晴れて「Objet de Art 」(オブジュダール)となってこの世に生まれ出る。
その媒体もしくは場所となるのが、美術館であり街の画廊だ。
とりわけ画廊は、作品をいわゆる「展示価値」として扱うだけではなく。
「貨幣価値」に替えて観客の手に渡してくれる重要な場所である。
しかし、もともと売るために作られたものではない作品、特に、難しい・分からない、などと敬遠されがちな現代美術を、お金に換える仕事は容易いものではないだろう。
しかし、今から5年ほど前、福岡から東京へ進出してきた画廊香月は、その困難な仕事に敢然と挑んでいる。
何よりも、その意欲を支えているのはオーナー香月人美の芸術に対するひたむきな愛と情熱だ。
このたびその画廊香月の企画により、福岡のギャラリーモリタで個展を開くことになった。
佐賀県伊万里の出であるわたしにとって福岡は身近な都会。
そして四年前、県立美術館で回顧展を開いたので懐かしい所である。
今回並べる作品は、新作旧作とり混ぜ殆ど紙に描いたドローイングで、実はその大部分は昨年の暮れに北海道は帯広の神田日勝記念美術館で展示したものだ。
北海道から九州へ一直線。
北の人たちの眼に触れたそれらわたしの分身たちが、南の人の眼にどう映るのか、生みの親としては大いなる楽しみである。
池田龍雄
○ 池田龍雄
〈主な展覧会〉
1928年 佐賀県伊万里市に生まれる/
1945年 海軍航空の特攻隊出撃寸前で終戦を迎える/
1948年 多摩美入学、岡本太郎、花田清輝、安部公房らの戦後アヴァンギャルド芸術運動に参加/
1954年 最初の個展 以来現在まで国内外で展覧会多数/
1955年 神奈川県立近代美術館「今日の新人展」以後、国立近代美術館、東京都美術館、各地の美術館の企画・主催展覧会に多数出品/
1972年 無窮運動『梵天の塔』を始動 現在も続けている/
1984年 横浜市民ギャラリーで「池田龍雄展」/
1985年 伊東市、池田20世紀美術館で「池田龍雄の世界展」/
2010年 山梨県立美術館、岡本太郎美術館、福岡県立美術館にて、回顧展『アヴァンギャルドの軌跡』を巡回/
2012-13年/「ベストセレクション日本近代美術の100年」国立近代美術館、「TOKYO1955-1970年」ニューヨーク近代美術館(MOMA) ほか
〈海外展〉
オックスフォード(イギリス)、ポンピドーセンター/パリ(フランス)、ロサンゼルス、シカゴ(アメリカ)、ポーランド、韓国、インド等、文学・映画・演劇等ジャンルを超えた交流を深め舞台装置など多数手がける
〈パブリックコレクション〉
東京国立近代美術館、国立国際美術館、東京都現代美術館、世田谷美術館、練馬区立美術館、山梨県立美術館、川崎市岡本太郎美
術館、富山県立近代美術館、三重県立美術館、兵庫県立美術館、栃木県立美術館、和歌山県立近代美術館、名古屋市美術館、広島
市現代美術館、福岡県立美術館、佐賀県立美術館、福岡市美術館、熊本市現代美術館、神田日勝記念美術館 ほか
□ 関連イベント
■ 3月14日 pm17:00~ オープニングレセプション
■ 3月15日 pm16:00~ 池田龍雄氏によるギャラリートーク「わたしにとって,絵とは何か」
会場 ギャラリーモリタ 参加費 2.000 (1drink) 50名限定(要予約)