IAF SHOP* | 「斬首譚」 和田聡文 個展
■■ 斬首譚 ■■
アタシさぁ、組立、上手いんだ。
毎日、「ぽにぽに社」で「ぷにぷに」100個、組立てんの。
うちの課、10人居るけど、ぜったいあたしが一番上手。
アタシが組んだ「ぷにぷに」。見たらすぐ分かるもん。
アタシのやった仕事だって、すぐ分かる。上出来。バツグン。
でっさぁ、たまたま会った経理の人に自慢したら、
知らないって言うの。アタシなんて。
組んだのはアタシじゃないって。
組み立てたのは、うちの「課」で、課長の人だって。
で、ちょっと、ガッカリしちゃって、ウラウラして、
プラプラ、廊下で、貼ってあった社内報を見てたの。
社長いわく、
「ぽにぽに社」は、3万個の「ぷにぷに」を今月作りました。」
とのこと。
社長の写真が載ってて、社長の後ろのひな壇に課長が写ってんだけど、
顔が無いの。首から上が無いの。
そう言えば、課長の顔、覚えてないの。アタシ。
それでさぁ、もう終業時間だし、疲れちゃったし、
給料日だったので、帰ることにしたの。お腹空いたし。
で、行き付けの飲み屋に寄って、夕飯、食べたの。
ボーとしてたら、テレビでニュースやってて、
「「ぽにぽに社」は株主の物だー。」とか株主総会で叫んでるの。
会長様が叫んでて、会長の後ろのひな壇に社長が写ってんだけど、
顔が無いの。首から上が無いの。
そう言えば、社長の顔、覚えてないの。アタシ。
で、話のついでに、行き付けの飲み屋の店主に自慢してみた。
「アタシ、この「ぽにぽに社」で働いてるの。
一番良い「ぷにぷに」はアタシが組み立てたの。」
でも、知らないって。アンタが誰だか分かんないって。
でっさぁ。慌てて顔を触ってみたの。でも無いの。
顔が無いの。首から上が無いの。
そう言えば、自分の顔、覚えてないの。アタシ。
名前もわかんないや。
そういえば。
先月、お給金をもらって、自分の名前にサヨウナラを言った。
今月、お給金をもらって、自分の名前にサヨウナラを言った。
だぁれもあたしをおぼえてないので、
すてきななまえをあたしはかむる。
恥ずかしいし、首うえ、うっすら、寒いので、
カバンから「ぽにぽに社」マークの安全帽を出して、冠ったの。
そしたら、店主、分かったの。
「ああ、「ぽにぽに社」の社員さんでしたか。
おたくの「ぷにぷに」が無いと一日も暮らせません。
壊れても買いなおせば、品質、まったく同じでありがたい。」
店主、にっこり、笑ってた。「社員」もにっこり笑ったよ。
■■ すてきな男女11名の図、お部屋の壁4面にいっぱい。
■■ および、部屋中央に光の柱を為す、
■■ 首無し男女墜落の図、4枚による展示。
■■ 毎日、雨が降るよ。鯨幕も垂れ下がる。
■■ 追加の展示物も幾ばく。