尾崎 千夏「燐光」
真夜中の 静かな 横断歩道なら渡れるような 気がしたけれど
今ここで 死にたくはないから
ただただ待っている。
ただ 死ぬことは待ってくれない
待ってたまるか !
それでも 真ん中で 立ち止まってみる。
影 を追いかけてみる
誰もいない
月 に手を伸ばしてみる
届かない
家の前の 交差点 さえ遥か遠く安易に海を渡ろうとしている。
それは
赤信号のまま黒い線を渡るようなものなのかもしれない。
落ちたら 鰐 に喰われて 死ぬ
だなんて事は無いことはわかってる
幼き頃からの悪い癖。
手 をあげた振りして
誰かに 手 を振っている
あの頃の自分とすれ違った
交差して
誰に 手 を振ったんだろう
手 を伸ばしたまま大人になった
今でも 月 には届かなかった
そんなことはとっくにわかってるわかっているというのに
夜の真ん中 の 道路の真ん中
線など無くとも歩いて行けた
向こう側
八方向から光が飛んできても
気付かないふり
息を吸ったその瞬間、一瞬死んで、
息を吐いたその瞬間、生まれ変わった
何事も無かったかのように
私は歩き出した わたしは ・ わたしは
profile
尾崎千夏
2016 年より写真を始める。
人物を中心に撮影。
グループ展参加多数。
最近では色や光を意識した心象風景、
記憶を記録する風景写真を撮り続けている。
profile/尾崎千夏
2016 年より写真を始める。
人物を中心に撮影。
グループ展参加多数。
最近では色や光を意識した心象風景、
記憶を記録する風景写真を撮り続けている。