明治25年(1892)に遠賀川の川船船頭の子として生まれ、ほぼ半世紀を筑豊の炭鉱労働者として生きた山本作兵衛(1892~1984)は、坑内・坑外に渡る炭坑の労働や、炭坑が作り出したコミュニティ、そこでの人びとのくらしを描いた厖大な記録を残しました。
それらは雪崩閉山と称された筑豊の解体期に、何の絵画教育も受けていない一介の労働者によって、驚くべき記憶力の中から紡ぎ出されたものです。
その多くが児童が使う粗末な画用紙と水彩絵の具で描かれた作兵衛画は、独特の技法と視点で、見る人に不思議な安らぎと懐かしさを与えるものです。
坑内の過酷な労働や、事故、暴力などの負の側面を描く場合でも、作兵衛はそれらを告発するのではなく、そこに生きた人人々の存在全体を、肯定の眼で包み込んでいます。
このような絵画作品は、世界に例を見ないと言ってよいでしょう。
1960年代の後半に作兵衛画が世に出ると、多くのメディアに取り上げられ、人々の注目を集めました。
そして、2011年にはユネスコによって世界記憶遺産Memory of the Worldに登録されました。
しかし、世界遺産に登録された原画は、画用紙(酸性紙)に水彩絵の具で描かれたという物質的な脆弱性から、所蔵する田川市石炭・歴史博物館でもきわめて限定された公開しかされていません。
本展覧会では、所蔵機関でも実施したことのない大規模な原画の展示によって、観覧者にじっくりと作兵衛の世界に浸ってもらいます。
それと同時に、映像資料を含むさまざまな関連資料によって、山本作兵衛の炭坑記録画に描かれた世界と、それを生み出した筑豊という歴史的風土を紹介するとともに、なぜそれが世界性を持ったのか、今日炭鉱はどのような意味で歴史的遺産なのかを解き明かします。
主 催 : 山本作兵衛の世界実行委員会(福岡市博物館、RKB毎日放送、毎日新聞社、西日本新聞社)
特別協力 : 田川市石炭・歴史博物館
協 力 : 九州国立博物館、福岡県立大学
後 援 : 福岡県、福岡県教育委員会、田川市、飯塚市、直方市、中間市、福岡市教育委員会、(公財)福岡市文化芸術振興財団、福岡商工会議所、西日本リビング新聞社、毎日メディアサービス、cross fm、LOVE FM、西日本鉄道、九州旅客鉄道、一般社団法人日本自動車連盟福岡支部、一般社団法人福岡市タクシー協会、西日本文化サークル連合、西日本新聞TNC文化サークル
助 成 : (公財)福岡文化財団
協 賛 : 中村産業グループ、ひよ子本舗吉野堂
特別協賛 : 麻生グループ